TOPコラムコラム・岡山の事件簿>10.井笠鉄道、突然の廃業

『井笠鉄道、突然の廃業』

井笠鉄道とは


 普段の足として利用しているバスが、突然なくなったらどうしますか?
 今回はその実例である井笠鉄道の突然の廃業を紹介します。

 まず井笠鉄道という会社について、ご紹介します。
 1911年に笠岡~井原間を結ぶ鉄道として創業、後にバスの業界に参入。
 1971年に鉄道から撤退した後はバス事業を中心に、ボーリング場や、遊園地(福山市の赤坂遊園)など、アミューズメントの事業も手がけた事もありました。

 井笠地域、広島県福山市を中心に、市民の足として親しまれていたバス会社でしたが、2012年10月迄でバス事業から撤退し、倒産しました
 

突然の廃業


 バス会社も企業である以上は路線からの撤退や廃業もやむをえませんが、井笠鉄道の倒産は余りにも突然の出来事でした。
 本来は半年以上前に廃止の届出をするべきところが、10月12日に廃止届けが出されて、廃止となるのが10月31日でした

 定期を利用している方はご存知の通り、10月は多くの人が定期を買い換える時期です。(年度の都合で4月に6ヶ月定期を購入→10月に再購入…というケースが多い)
 既に従業員への給与も滞っている状況に陥っており、定期や回数券などの払い戻しは難しいというのが井笠鉄道の発表でした。

 購入したばかりの定期券が無価値になり、更に3週間もしない内に通勤、通学、そして生活の足になっていたバスも無くなってしまう
 公共性の高いバス事業だけに、混乱は必至の情勢でした。

市民の足の救済


 1月1日。
 井笠鉄道による運行が終わると、この日からバスを利用していた人たちの交通手段が失われる事になってしまいます。

 そこで地元のバス会社・両備グループが救済に乗り出しました。
 両備グループ内の企業で、中国バス(本社、福山市)が11/1以降の主要路線の運行を代行する事になりました。
 また井笠鉄道が請負っていた井原市のコミュニティバスは北振バスに引き継がれ、減便などは行われたものの、運行が続けられました。

 後に中国バスが100%出資の子会社『井笠バスカンパニー』を設立し、安定的な運行が確約されました。
 また無価値になってしまった定期の費用も、自治体が新たに購入する定期の費用を一部負担するという形で、利用者の負担を軽減する措置をとりました。

 井笠鉄道の際は地元住民への影響が少なくなるように対応できたましたが、公共性の高い事業の突然の廃業だけに、国や地方自治体などの対応や法整備など、今後への課題を残す倒産劇となったのは間違いありません。



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関連リンク

画像:井笠鉄道の本社(現・井笠観光本社)
画像提供:goolgleマップ



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