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エロ本が原因で自害した武士
禁断の娯楽と、重すぎる叱責
1731年(享保16年)、江戸にある岡山藩邸でのある一晩の出来事が、一人の藩士の運命を大きく狂わせました。
その名は土肥久志郎。彼を追い詰めたのは、現代でいえば「仕事中の不適切な持ち込み」という、誰にでも起こりうる過ちでした。
事件は江戸屋敷での「寝番(宿直)」の最中に起きました。
土肥は、当時の娯楽本である「春本」を密かに持ち込み、同僚と談笑に耽っていたのです。
春本は春画という男女の性交シーンを煽情的に描いたイラストを本にまとめたもので、現在の感覚でいえば「エロ本」といったところでしょう。
しかし、運悪くその現場を上司に踏み込まれてしまいます。そして武士としての心得を厳しく問われる大説教を受けました。
現代なら「厳重注意」で済む話かもしれませんが、格式を重んじる当時の武士社会。土肥にとって、その叱責は自らの存在意義を根本から否定されるほどの衝撃だったのでしょう。
帰国を急ぐ道、断ち切られた希望
この時は春本を持ち込んだりしたものの、本来の土肥は非常に実直な人物だったと伝えられています。
その生真面目さが仇となり、彼は深く思い詰め、次第に心身に不調をきたしていきました。周囲も事態を重く見て、療養のための帰国を命じますが、故郷へ戻ることが決まっても、傷ついた心は癒えることがありませんでした。
岡山への帰り道、監視役の隙を突き、あろうことかその刀を借り受けて自ら命を絶ってしまいました。
真面目すぎるがゆえに逃げ場を失い、死をもって「面目」を立てようとした一人の藩士。帰郷を目前にして力尽きたその物語は、現代を生きる私たちの心にも、深い余韻を残します。
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写真:岡山城
最終更新日:2026.4.8





